鑑賞情報

2020年3月2日15:15~

新宿シネマカリテ スクリーン2

C-5

 

2020年25本目の鑑賞作品。この作品の鑑賞を最後に映画館の営業休止を迎えてしまい、再開するのは2ヶ月以上後の劇場版SHIROBAKOまで待たされることになりました。……いえ、SHIROBAKOも東京と神奈川の映画館の再開が遅れていたので静岡まで観に行ったのですが。

それにしても休止最後の作品がテリー・ギリアム監督作ですか……ある意味、作品以上の悪夢ですw

 

 

テリー・ギリアム監督作品

 

この作品を観るうえで最初に押さえておかなくてはならない最大のポイントが【テリー・ギリアム監督作品】であるということ。

氏の作品は夢と現実がごっちゃになるし、唐突に理不尽な展開が無意味(に思える)に起きるし、デザインはぶっ飛んでいるうえに何もかもがブラックです。氏の作品であるということを念頭に置いて観ないと【なんだこのクソ映画は!】と腹を立てることになりかねません。

まぁ、このクソ映画っぷりを楽しむのがテリー・ギリアムの楽しみ方なんですけど。

個人的には自分をドン・キホーテと思い込んでしまった田舎の靴職人の爺さんが未来世紀ブラジルの主人公役の人だったのが良かったです。散々中止に追い込まれてようやく完成に至った作品が監督の集大成っぽくて。

 

タイトル

原題は【The Man Who Killed Don Quixote】で直訳すると【ドン・キホーテを殺した男】になるのですが、タイトルに監督の名前を入れたのは正解だったかも。

日本タイトルで出演俳優の名前を冠して売れなさそうなB級作品に客を呼び込もうとする手法はありますが、今回は役者ではなく監督の名前で客を呼ぶということですね。テリー・ギリアム作品を求めるのは基本的に監督のファンなので、この名前を売りにするのはまっとうなマーケティングだとは思います。

ただ、この映画を前売り券を購入して鑑賞するようなファンは初めから知っている情報なので、新たな客層を開拓するようなタイトルであることは間違いないでしょう。

 

これは夢か現実か?

 

アダム・ドライバー演じる主人公が正常な思考で過ごす現実と、現実ではありえない出来事が次々と襲い掛かってくる(悪)夢や妄想のようなシーンがありますが、一応どちらが現実か妄想かは分かるような体を成してはいます。

ただ、その境界は曖昧です。その結果として【どちらが夢でどちらが現実か分からなくなるような】作りを目指しているのかな?と鑑賞中は思っていたのですが、後日ノートに感想を書いたころには【妄想でも体験してしまった以上、現実の未来に影響を及ぼすので夢も現実も等価値なのでは?】と書き記していました。

映画の結末でよく分からない体験をした主人公は新たなドン・キホーテになってしまうのですが、これは映画の撮影という体験をした靴職人の爺さんがドン・キホーテになってしまったことの再来です。

 

女性蔑視

 

作品の弱点は、内容や構成は抜きにして、女性キャラクターの造形はおざなり。女性感が一昔前の感覚のまま変わっていないせいかキャラクターづけがステレオタイプというかパターンが少ない。

まぁ、この映画の場合は女性の主要人物は多くないのでデメリットは少な目かもしれませんけど気になる人は多そうです。

いきなりグレタ・ガーヴィグのような作風になったら焦りますけどw

 

総評

70/100点。好きだけど他の人には薦められない作品……でもテリー・ギリアム作品には時々見返したくなる魅力があるんですよね。

安価になったらソフトを購入するのもアリ。

紆余曲折の果てに完成したということも踏まえて作品を楽しむために、【ロスト・イン・ラ・マンチャ】を見ておくのもいいかも。

 

年齢的にもこれが最後の作品になるかもしれませんからね。