鑑賞情報

2019年12月1日 14:10〜

小田原コロナシネマワールド シネマ2

H-4

 

映画の日2本目は公開終了直前の【蜜蜂と遠雷】を選択しました。

原作は読んでいますが、はたしてそれがどのように影響するのか?

 

それでは感想です。

原作とは別物

 

……いえ、これはテキストを映像化する時点で当たり前のことなのですが、小説を読んで得る印象と映画を鑑賞して受ける印象は異なります。

驚きなのはストーリー自体はキャラクターの省略などはあれど、かなり忠実なことにも関わらず、結果として印象が異なってしまっていることが気になりました。

監督や脚本の描きたいテーマと読者(私)がこの作品で読み取ったテーマが異なるからだと思うんだけど、この話って【天才の葛藤と、それを乗り越えて得られるモノ】みたいな内容でしたっけ?

 

なんか、ありきたりなテーマになってしまっていて、【ホントに脚本家はこの小説を読んだの?】とか【実は私の勘違いで読んだ本は別作品だったの?】と心配になりました。

 

一般的にはどうだか分かりませんが、ストーリー自体は小説版の方がはるかに上だと思います。

 

映像作品としての要素

 

ただし、映画として完成度が低いのかと言われると話は別で、かなりの成功例だと思います。

コンテストを題材としているので選曲はややテクニカルな方面に傾いている感はありますが、音が入るだけでイメージでしかなかった小説内の描写が説得力を持ってきます。

 

この説得力を生かすために脚本を分かりやすいものに変更したのかな?って考えてしまいました。その割には黒い馬のイメージ映像のような言われてみないと伝わらない部分(馬は走り方によって拍子が変わるのでメタファーに用いられているのか?)もあってちょっと演出的には半端なところもあります。

 

それでも音圧とルックで正解み近い演出が出来ている時点で、この作品の映画化は精巧なのではないでしょうか?

 

省略

 

この手の長編作品の映像化によくあるキャラクターの整理省略と一人のキャラクターに複数のキャラクターの役割りをあてがって説明キャラ化させてしまう問題がクリアー出来ていないことについては少し残念に思います。

役割り的に無駄に思えたり、別のキャラクターに置き換えられる可能性があったとしても、世界の構築にキャラクターの存在が必要不可欠と考えるのなら、どんな端役でも画面上に登場させる価値はあると思うんです。

 

個人的にはエピソードの取捨選択は仕方がないとしてキャラクター整理については否定的なのですが、この省略方法を用いて成功している作品に出会ってみたいとは思うんですけどね。

 

総評

 

75/100点。注文を付けつつも評価は高め。たぶんこれらが改善されていたら85点を超えていたのではないでしょうか?

 

意外な所で今年の鑑賞作品でも上位に位置する作品に出会えて満足です。