2018年11月9日、アミューあつぎ映画.comシネマの閉館最終上映で【ウインド・リバー】を鑑賞しました。
この作品、新宿にブリグズビー・ベアを観に行った時に気づいたんですけど、時間が取れずに見送ったんですよね。アメリカでも小規模上映から公開館が拡大していったように、ミニシアターから徐々に増えていくあたり日本でも同じような経緯を辿っていますね。
それでは感想です。
配役
この作品の最大の注目点はメインキャストの2人がジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンというアベンジャーズのホークアイとスカーレットウィッチのコンビが務めるということ。
【ホークアイが武器を弓から銃に持ち替えた!】とか誰でも思いますよねw
でも、この作品は規模は大きくて内容はシリアスでもどこか大作ならではのお気楽ムードが漂っているアベンジャーズとは異なりどこまでもシリアスです。
普段、シリアスになりきれていない(とか言ったら失礼だけど)2人の演技に注目ポイントです。そうか、こんな演技も出来たんだ……
人種問題
アメリカ映画でシリアスなストーリーを構築するために最も適した題材が【人種問題】です。
今年の2月に観たデトロイトは白人と黒人の間での人種差別が切欠となっていますが、今作ではネイティブアメリカンと一般的なアメリカ人との間に起こる差別と摩擦がテーマとなっています。
ただ、このテの作品が作られるたびに気になることは【白人と黒人】や【ネイティブと一般的アメリカ人】という2つに別れた対立構造はあってもアジア系やイスラム系、ゲイといった細かい派閥に別れて話が進むタイプの話にならないこと。
圧倒的な強者と弱者という別れ方をしないと、かえって差別は発生しないものなのでしょうか?
ネイティブアメリカン保留地
差別問題という視点の前に【自然の脅威】という舞台設定が作品を作り上げています。
そもそもネイティブアメリカン保留地という場所そのものが自然の脅威にさらされ隔離された場所であり、自然と厳しいイベントが発生する要因となっています。
それにしても、ちょっと日本では馴染みのない舞台ですね。
かえってラノベの世界観の方がエルフを始めとする他部族や複数の国家での闘争なんかで馴染み深い設定なのかもしれません。
リアリティは雲泥の差ではあるのですが。
演出
ラストバトルでの狙撃シーン、狙撃手ではなくターゲットの方がカメラの対象となる演出は初めて見たかもしれません。主人公の活躍自体は目にすることはできませんが効果は最大限に発揮されていることが分かりますし、完全に狙われる側の恐怖に共感できます。
まだ、こんな見せ方があったんですね。
あと、地味にすごいのが雪山のシーンで対象となる人物以外の痕跡を雪の中に残さないこと。CGで処理したわけでもないだろうしかなり大変だったんじゃないかなぁ?
決着
この物語のキモは主人公が復讐を遂げるわけではなく、あくまで【自然に委ねる】ということ。
許すとか見捨てるなどという個人の思惑を超えた部分で人を裁くのは壮絶です。
確かに根っこの部分で生殺与奪権は個人に与えられているわけではないので冷静になれるのかもしれませんが、やはり残酷ではありますね。
ここら辺の主人公の心理状態は雪山のように厳しく強靭です。
総評
75/100点。派手な見せ場はないですが物語を厳しくありのままに追う姿勢が凄いです。主役がジェレミー・レナーで良かったなぁ。
【経験はないけど馬鹿ではない】という新人FBI捜査官役のエリザベス・オルセンも良いです。彼女、アベンジャーズのような役より社会派映画の方が合うかもしれませんね。
あとは今後、人種差別やマイノリティを扱う作品を撮るのであれば、実話に基づくものではなく架空の舞台を用意しつつリアリティを持った作品も見てみたいですね。
アメリカ国民以外に受け入れられる作品を作るという意味でも。