自分が中学生だったころ、学校のクラブ活動でアニメクラブというものに参加していた。ちなみにクラブ活動は授業の一種として行われていた参加必須の選択式の文化活動である。
学校でガンプラが作れるので、当時は模型クラブに入りたかったのだが参加人数過多のため、自分は第2希望のアニメクラブを選択した。
アニメクラブといっても、もちろんアニメを撮影するわけではない。
だからといって授業の一環として行われているので、自分の好きなアニメの話をメンバーと駄弁るような文芸同好会とか漫研のようなヌルい活動はしない。
アニメクラブの活動はセル画を描くことなのである。
クラブ活動の顧問は社会科担当の岡田先生……彼が独自の手法でセル画の描き方を教えてくれた。
- まず描きたいイラストを用意する。自分で絵が描けなくてもなぞって写せばいいので問題なし。
- イラストにセルを重ねて油性ペンで主線をなぞる。。
- 美術で使う絵の具に木工用ボンドを少し混ぜて裏側から濃い色→薄い色の淳に塗る。
- はみ出したら乾いてから割り箸でひっ掻いて削る。
- 全部塗り終わったら完成。
初めて教えてもらって完成させたときは結構感動したものですが、今思い返すと色々と考えられていたりとか微妙にツッコミどころもあったりとかして面白いです。
1の元絵の用意はクラブ活動参加者の画力に依存せず、自分の好きな絵を描かせてモチベーションを保つ……しかも、実際のアニメ制作現場のように原画と彩色は別の人間が担当するということを自然に実践しています。
2の主線引きでは誰もが持っているマッキーの極細を使用するのでクラブ活動の際の費用を軽減しています。
3が一番の驚き。当時アニメディアやニュータイプを読んでいたので【セル画はアニメカラーという専用の絵の具で塗るもの】という固定観念があったのですが、こんなに簡単にセルって色が塗れるんだ!と驚かされました。全員共通で所有している教材の絵の具に木工用ボンドを混ぜただけですよ!
4も実際のアニメの現場と同じ。竹べらではなく簡単に用意できる割り箸を使用するところも考えられています。
5は同時に白い紙じゃなくて透明なセルに描くのだから白目も塗らないと後ろが透けるぞ、と言われました。濃い色から塗るから黒目や髪の毛から塗り始めて白目が最後になるパターンが多かったのも印象に残っています。
あのクラブ活動から30年ほど経ちましたが、いまだに詳細に覚えているのだからよほどのインパクトがあったんでしょうね。
ちなみに学校の文化祭にはアニメ三銃士のダルタニャンとコンスタンスがダンスを踊っているシーンを出展しました。他にジリオンとかFSSとか描いた記憶があります。
ちょっとまたセル画を描いてみたいなと思いセルの値段を調べてみたのですが、1枚300円近くするんですね。
当時は最初の1枚は全員に配られて、2枚目からは30円で先生から買っていたのでびっくりしました。単純に物価の上昇からなのか、アニメ制作がデジタルに移行してセルの需要がなくなり単価が上がったのかは分かりませんが。